福永令三「クレヨン王国の十二か月」

クレヨン王国の十二か月 (講談社青い鳥文庫)

クレヨン王国の十二か月 (講談社青い鳥文庫)

おすすめな児童小説。同シリーズ「月のたまご」の完結編発売記念に再読。(肝心の完結編は未読)
あらためてページを開いてみたら、最近の同シリーズに比べて、ひらがなが多い気がした。
物語は大晦日の夜に始まる。
シルバー王妃の12個の悪い癖が嫌になって逃げ出したゴールデン王を探すため、小学生のユカは王妃とともにクレヨン王国の十二の町を旅することになる。
シルバー王妃の癖とは、散らかし癖やうそつき、自慢、偏食など、子供なら(大人でも)ひとつは思い当たるようなことばかり。それを、十二の町で、ひとつずつ、シルバー王妃が克服していく。悪い癖を直していく話だなんていうと、いかにも教育的だけれども、ひとつひとつのストーリーがおもしろくて、説教じみた感じはさほどしない。シルバー王妃の反省とともに、自然に自分も反省する感じ。
町は1月から12月まで、それぞれテーマの色が決まっていて、その月にあった季節感のあるストーリーが、色鮮やかな情景で描かれている。
魅力はいっぱいあるけれど、擬人化された動植物が生き生きと登場するのも楽しい。
ナメクジウオやらアメフラシやらクチベニヒモムシなんていった動植物が登場して、人間の言葉で喋ったりもする。アメフラシは空の女神が雨を降らすのに使ったりする。クチベニヒモムシは口紅になる。自然保護のメッセージもこめられている。
個人的にすきなのは2月の町に出てくるいなずまの子。ヒョウの商人に捕まって、サイダーの空きビンに入れられて売り物にされている。驚いたりすると強く黄色く光る。その絵を思い描くとなんだかわくわくする。いや、その子自体はかわいそうなんだけれども、その絵がね。
町で金色のものを見つけるたびに、ゴールデン王様の髪の毛だ、爪だ、なんてはしゃぐシルバー王妃がかわいい。
いろいろなメッセージのこめられた児童書だけれども、とてもおもしろい。読んだ子供たちが、素直にそのメッセージを受けとれる本だと思う。