星新一「マイ国家」

マイ国家 (新潮文庫)

マイ国家 (新潮文庫)

最近読んだ本。自分を雇うよう、あくどい売込みをするロボットや、刑事に職務質問されて、自分こそ刑事だと言い張る不振人物、マイホームを独立国家だと主張する人物などが登場する、ショート・ショート31篇を収録。
「ねむりウサギ」は、どうしてもカメとの競争に勝てないウサギの話。かわいそうだが、その不幸がおかしい。あの民話の主人公も、こんな気持ちだったのかしらなどと思ってしまう。周囲の反応も風刺たっぷり。
一番「深いなあ」と印象に残ったのは「友情の杯」。死期の近い老人が病院のベッドで、若いころに友人にもらった洋酒を飲む。しかし、一杯だけ飲んで、後は捨ててしまう。何事においてもライバル関係にあった友人から、和解のしるしにと送られた洋酒。さあ、それを送った友人の真意は?というお話。ラストの友人の真意を知りえたはずの老人の反応が意味深。