福永令三「クレヨン王国の四土神」

クレヨン王国の四土神 (講談社青い鳥文庫)

クレヨン王国の四土神 (講談社青い鳥文庫)

月のたまご完結篇を読むための再読。
宇宙への打ち上げロケットに、クレヨン王国にさまざまな災いを起こす疫病神とされる四人の土神、「四土神」を積み込んで、厄介払いをしようとしたところ、失敗。王国の対応にあきれた四土神たちによる厄病が流行りだし、また土神を失った植物たちは、絶望でみずから枯れだした。この王国の危機を救うため、カメレオン総理は、かつて王国に奇病「青ころり」が流行ったときに、国民を絶望から救った第三王子のサード殿下と、星村まゆみを日本から呼び戻すことを決断する。というところまでがこの本のストーリー。
ストーリーを進めていくのは、とても懐かしい月のたまごシリーズの登場人物たち。
ストンストンにアラエッサ、シルバー王妃やキラップ女史はもちろん、青目庵の庵主となったオルガ=スチーワ、青ころりの治療に努めたゲートック医師、それに雲影刑務所には月のたまごシリーズで投獄されたあの人やあの人やあの人や…。
新しい登場人物には、ナルマニマニ博士製作留守番ロボットのアクーリカ。「不同意モード」にすると、ちょっぴりお高く、生意気になるところが人間味があるように思えて魅惑的。
好きなシーンはいっぱい。
ストンストンとアラエッサの相変わらずの友情や、ナレンナーとストンストンの母子愛。二人は養子縁組を白紙にしてしまった覚えがあるが、お互いを思い合っている様子が好き。
女子マラソンの女王だったルカの挫折と復活への強い意思。伯爵という地位に落ち着いてしまった自分を叱咤するアラエッサ。年を取り、親しい人々が離れていき、心細い思いをしているカメレオン総理。
この巻は、あちらこちらにユーモアを散りばめつつも、これから広がるだろう伝染病が影を落としていて、全体的に暗い感じ。その中で、それぞれに自分を取り戻そうと立ち上がろうとする登場人物たち。
サード、まゆみの帰還により、あかるいクレヨン王国がよみがえってくれる事を期待しつつ、読了。